5月 212010
 
担当の人の「この業界で働く若手のエンジニア向けのメッセージ」を書いてほしいとのリクエストに答えるつもりで書いたのだが、「説教臭くなくて、ちゃんと伝わる」文章を書くのが難しくて結構苦労したので、ぜひとも読んでいただきたい。
 この話の核となる部分は、私の「マラソンで金メダルを取る人たちって『過酷な練習に耐える精神力がある』から頂点に立てるんじゃなくて、『他の人たちにとっては苦痛でしかない練習が実は楽しくて仕方が無い』から頂点に立てるんじゃないか」というセオリーにもとづいている。高橋尚子が現役のころの話を聞いていて、つくづく「本当にこの人は走ることが好きなんだなあ。だからこそ誰よりもたくさんの練習をすることができて、その結果、早く走れる様になったんだな」と感じて作ったセオリーである。
 プログラマー歴30年を超える私も、なかなか取れないバグに悩んだり、回避しようのないシステム側の不具合に苦しまされたり、納期に迫られて眠れない夜を過ごしたり、などという(普通に考えたら)過酷な状況に置かれることはしょっちゅうあるが、それで「プログラムを書くのを辞めよう」なんて思ったこともないし、今後もバリバリ書き続けようと思う。
 昨日も、iPad向けの二つ目のアプリをアップルに提出したばかりだし、日本に向かう飛行機の中でも次のアプリの準備を進めて時間を過ごした。iPhoneアプリの開発のために全く新しい開発環境を学ぶのも楽しくてしかたがなかったし、Google App Engineで遊ぶためのPythonの勉強も自分で喜んでした。
 はたから見れば、「あの人は夜も週末も働いているし、すごく努力している」ように見えるかも知れないが、私自身にとってみれば「新しい開発環境や言語を勉強する」ことは旅行やゲームをすることや映画を見たり本を読んだりすることなんかよりも何倍も楽しいわけで、それを「努力」とか「苦労」とか呼ぶことが適切とは思えない。
 どの業界にも「仕事が辛くて金曜日が待ち遠しくて仕方がない」みたいな働き方をしている人がたくさんいる。簡単に転職などできないことも分かるが、「仕事が楽しくて、週末休んでいても常に仕事のことを考えてしまう」職に就けた人と比べた人生の充実度の違いは大きい。
 そんな意味でも、「自分がどんな職に就くべきか」はもっともっと真剣に考えるべきテーマだと思うんだがいかがだろう。
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 Posted by at 09:47