1月 062010
 

・失業は経済的な救済では癒されない。失業手当が肉体労働者の賃金とさして変わらない国においても、失業に対する救済がまったくない国と同じ社会現象が見られる。失業した者は社会から疎外される。気力を失い、技能を失う。無関心となり、無感覚となる。
・われわれは、目に見える危険、すなわち失業の問題は解決できるかもしれない。しかし失業ほどは目立たないが、さらに大きな問題として、まさに就業している人々の社会的な地位と役割にかかわる問題を解決しないかぎり、破滅あるのみである。
・自動化した大量生産が、社会的な地位と役割を失った労働者を生み出すことは、考えてみるまでもない。まさに社会的な位置と役割を持つ人間の存在を否定することこそ、この新しい生産方式の真髄である。
・新しい生産方式のもとでは、機械のように働く肉体労働者が、本当の労働者である。技能を持つ技術者のほうが、未熟練労働者の仕事を準備する。彼らのほうが、自分自身では仕事をしないという意味で補助者である。
・いまや、直接の生産活動を行う者は、まっすぐ伸ばした手に刷毛をもち、目の前を流れる自動車の脇腹に赤い線を引いている組み立てラインの肉体労働者である。彼らは、自動車がなぜ動くのかを知らないし、数日で学べること以上の技能は何一つ持たない。彼らは、職場において、社会的存在としての人間ではない。高能率の装置における、交換自由な歯車である。
・生活補助や失業対策事業の対象者の一人一人について見るならば、必要とされているものは、社会への参画であり、社会的な地位と役割であることを知る。いずれも、社会保障だけでは与えることのできないものであり、事実かつて一度も与えることのできなかったものである。

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 Posted by at 09:45